「お前、なよなよしてる上に優柔不断すぎるよな。いつになったら決めんの?」

「早くしろよ。お前のせいで俺ら帰れないじゃん」

「ラストチャンスでもう一回聞いてやるけど、ここのトンネルを一人で往復するか、金属バットで最低二十回殴られ続けるか、全裸でダンスでも披露するか、選べよ。どれかやってくれたら解放してやるってこっちは言ってんの。分かる?」

「ど、どれも、いや、いやです……」

「嫌だって? 調子乗んなよ」

 鈍い音が響いた。足か手で、もしくは金属バットで暴行を加えた音に違いない。呻き声も聞こえた。明らかに、心霊系YouTuberの類ではなかった。

 声の数からして、相手は四人。一人は金属バットを所持しており、一人はスマホのライトでその場を照らしている。そして一人は両手が空いており、一人は地面の上で丸くなっている。

 まず狙うのは金属バットの男子だろう。金属バットは十分な凶器となり得る。頭をかち割られたらこちらが殺されてしまうかもしれない。そうなる前に殺して、金属バットを奪ってしまいたい。それを手に入れてしまえば、素手よりも遥かに楽に殺せる。金属バットで撲殺するという初めての経験も味わえる。

 彼の集中力は途端に上がった。三人を通り越して四人をまとめて殺せる。この機会を逃すわけにはいかない。全員絶対に殺す。

 脱いだパーカーを両手で握り締め、ペースを落とすことなく金属バットの男子の背後に迫った。気づかれても構わない。先手必勝だ。逃走しようとする人間はカナデに任せておけばいい。

 リンチに集中している三人のうち一人が、不意に何かの気配を感じたかのようにパッと振り返った。その瞬間、驚愕の声を上げる。連れの声に反応して咄嗟にこちらを見る金属バットの男子の首に、彼は躊躇なくパーカーを回した。

「え……」

 一番最初に殺ると決めた男子の口から気迫に欠けた声が漏れた。