ドライブの予定が、途中で殺人の予定に変わるとは思っても見なかったが、人を殺せるのなら通常の方法と違っていても良しとした。新鮮な気分を味わえるかもしれない。

 彼は緊張感や高揚感を胸にシートベルトを締め、早速車を道の駅から出した。

「誰か人はいると思いますか」

「いたらラッキーくらいの感覚ですね」

「同感です」

 車を走らせながら短い会話を交わす。人がいた時に殺ることは決定したが、それを実行できるかどうかの確率は限りなく低いだろう。それでもゼロではない。そのゼロではない可能性にカナデは賭け、突飛な提案をしたのだとすると、ギャンブルが過ぎるようにも思う。詐欺師はそのような賭けに強そうではあるものの、運が味方するかどうかは結果が出るまで誰にも分からなかった。

 カナデと一言二言話しつつ、ナビに従うこと数十分。目的地周辺だと思われる場所に到着した。ナビはまだ案内を終えていなかったが、指示する先は道が極端に狭くなっており、Uターンして帰ることも考えるとそれ以上車を進めるのは躊躇われた。今の時点でもそれほど道は良くないため、その向こうは更に悪路になっているだろう。

「ここから先は車だと小回りが利きそうにないですね」

 カナデも同じ意見のようである。彼は車を邪魔にならないスペースに置いてエンジンを切った。シートベルトを外して降車し、ナビが案内していた先を見る。奥まった場所でもあるせいか、月明かりはあまり届いていない。しかし、全く何も見えないわけではなかった。

 トンネル付近に人がいるかどうかの判断はまだできないため、いた場合に備えた行動を取ろうと彼は静かに足を進めた。自分の存在にできるだけ気づかれないよう、スマホのライトに頼ることもせず野生の勘で地を踏んだ。