後輩の評価が高すぎる気がしなくもないが、彼は否定も肯定もしなかった。喋るとギャルであることが判明した金髪の女には興味津々といったようにまじまじと見られ、あまり良い気分にはなれない。彼氏の前で他所の男を超かっこいいと言うのはどうかと思うが、その彼氏も他所の男をかっこいいだの中身もイケメンだの宣うのだから全くもって気分を害してはいないのだろう。共感してもらったことが嬉しくてたまらないといったようなことがその顔に書いてある。おまけにいつのまにか推されている。

「あれ、なんか聞き覚えのある声がすると思ったら」

「あ、店長、こんばんは」

「こんばんは。珍しいね、こんな時間にどうしたの?」

 後輩の声に導かれた店長が顔を出した。綺麗ではない歪な輪に自然と加わる。その瞬間、彼はそこから弾き出された。輪を歪ませていたのは未だ何も喋っていない彼であり、店長が来たことで歪だった輪が綺麗に完成した。

「先輩に彼女を紹介しに来たんです。先輩全然連絡先教えてくれないからここまで来るしかなくて」

「ああ、なるほど。なかなかガードが固いもんね」

「そうなんですよ。何回聞いても教えませんの一点張りで。俺嫌われてるんですかね」

「そんなことはないと思うよ」

「だといいんですけど」

 本人がいる前で話すような内容ではないと思ったが、それでも彼は無言を貫いた。ガードが固いと言われようが、嫌われているのかと思われようが、連絡先を教えるつもりはない。その意思が変わることはなかった。

 今のうちに、自分から意識が逸れている間に、彼はしれっとその場を離れようと画策したが、金髪のギャルにあっさりと見つかり動きを封じられてしまった。

 無視しても良かったが、そこまで態度が悪いのは逆効果かもしれない。自分の印象を可もなく不可もなくといった程度に保つためには、薄くても多少なりともリアクションを取っておいた方がいいだろう。