なぜ芽衣子にこんな要求をするに至ったのか、彼が話してくれる。
「俺はもともと結婚願望が薄いほうだったんだ。夏目の後継者という立場は面倒も多いから。俺自身はともかく子孫にまで押しつけることに迷いもあった」
率直に彼は語った。外から見ると恵まれているように見えるけれど、名家の御曹司という立場には苦労も多いこと。一年もそばで見ていれば部外者の芽衣子にも理解できる。
「ただ、祖母が……あれだけ強気で〝女帝〟と呼ばれていた人が最近は寄る年波に勝てないのか『死ぬ前に孫の結婚くらい見届けたかった』と言い出していて、そこを突かれると結構つらい」
「夏目社長のおばあさまって、ホールディングスの会長ですよね?」
「あぁ」
ナツメホールディングスの会長、夏目葉子といえば財界では知らぬ者のいない有名人だ。
彼女は夫亡きあと、後継者争いでごたつく一族を見かねて初めてビジネスの世界に足を踏み入れた。その時点ですでに四十歳を過ぎていたというのに、彼女は驚くべき才を発揮してナツメブランドを現在の地位まで押しあげた立役者。その辣腕ぶりから『ナツメの女帝』と呼ばれ、尊敬と畏怖を集めている。
「会長の気持ちもわかります。愛情とか心配ゆえに口うるさくなるんですよね」
芽衣子は自分の親も似たようなものだと話した。
「うちの両親も私がずっとひとり身でいるのは心配みたいです。私自身は自分の時間が大切だから、結婚にはあまり興味がないんですけどね」
「そう、悪意はない。だからこそ拒否しづらい」
彼は天井に向かってため息を吐いた。雲の上の御曹司も自分と似たような悩みを抱えていると思うと、少しだけ親近感が湧いた。
「俺はもともと結婚願望が薄いほうだったんだ。夏目の後継者という立場は面倒も多いから。俺自身はともかく子孫にまで押しつけることに迷いもあった」
率直に彼は語った。外から見ると恵まれているように見えるけれど、名家の御曹司という立場には苦労も多いこと。一年もそばで見ていれば部外者の芽衣子にも理解できる。
「ただ、祖母が……あれだけ強気で〝女帝〟と呼ばれていた人が最近は寄る年波に勝てないのか『死ぬ前に孫の結婚くらい見届けたかった』と言い出していて、そこを突かれると結構つらい」
「夏目社長のおばあさまって、ホールディングスの会長ですよね?」
「あぁ」
ナツメホールディングスの会長、夏目葉子といえば財界では知らぬ者のいない有名人だ。
彼女は夫亡きあと、後継者争いでごたつく一族を見かねて初めてビジネスの世界に足を踏み入れた。その時点ですでに四十歳を過ぎていたというのに、彼女は驚くべき才を発揮してナツメブランドを現在の地位まで押しあげた立役者。その辣腕ぶりから『ナツメの女帝』と呼ばれ、尊敬と畏怖を集めている。
「会長の気持ちもわかります。愛情とか心配ゆえに口うるさくなるんですよね」
芽衣子は自分の親も似たようなものだと話した。
「うちの両親も私がずっとひとり身でいるのは心配みたいです。私自身は自分の時間が大切だから、結婚にはあまり興味がないんですけどね」
「そう、悪意はない。だからこそ拒否しづらい」
彼は天井に向かってため息を吐いた。雲の上の御曹司も自分と似たような悩みを抱えていると思うと、少しだけ親近感が湧いた。



