今日も推しが尊いので溺愛は遠慮いたします!~なのに推しそっくりな社長が迫ってきて!?~

「それが今夜の本題。俺が君に頼みたいことだ」

彼がなにを言おうとしているのかわからず、芽衣子は困惑のまま話の続きを待った。

「そのオーナーは危険な人物だが、この業界で夏目より恐ろしいものなど存在しない。それはうちで働く君ならよく知っているだろう?」

夏目家が率いるナツメグループは不動産業界のリーディングカンパニーでその影響力は国内だけではなく世界各国に及ぶ。もちろん裏社会との繋がりなどはないが、正直そういう世界の人間よりも敵に回したらよほど恐ろしい。それが夏目家だ。

「結論から言おう。俺が手を回して、そのオーナーを排除してやる」

いつもとは別人のように冷酷な瞳で、彼は薄く笑う。

穏やかで優しい紳士。それが彼のすべてでないことは知っているつもりだった。

大企業のトップである以上、非情な決断をくださねばならない場面はいくらでもある。雪雅はそういう仕事を部下に押しつけたりはしない。悪役になる覚悟もしっかり持っている人で、だからこそはるかに年上の部下たちも彼についてくるのだ。

(知っているつもりだった。でも、はっきりと目の当たりにしたのは初めてかもしれない)

芽衣子は彼の迫力に押され、ゴクリと生唾をのんだ。それでも、冷静に頭を働かせて彼の言葉の真意を探る。

「社長は私に『話がある』ではなく『頼みがある』と言いましたよね。それはつまり、実家を助けてもらう見返りを私になにかを求めているということですか?」

彼はにっこりとほほ笑む。

「正解。理解が早くて助かるよ」

雪雅は優美な仕草で紅茶をひと口飲み、それから話を始めた。