今日も推しが尊いので溺愛は遠慮いたします!~なのに推しそっくりな社長が迫ってきて!?~

彼は人の感情の機微を読むのに長けている。芽衣子の質問の意図をすぐに理解したようだ。隠し立てをせず、明瞭に答えてくれた。

「今、進行している深丘町(みおかちょう)の再開発計画。こういう店を誘致するのが合うんじゃないかと思っていてね。その視察をしたかった」

都内西部に位置する深丘町 は小さな街ながら、ここにしかないオシャレなショップなども多く、昔も今も住みたい街ランキングの常連になっている人気エリア。ただ、さすがに街全体が古くなってきたのと消防法などの兼ね合いで再開発の必要が出てきていた。それを主導しているのが、ほかならぬナツメ開発で、雪雅が社長に就任したのもこのプロジェクトを直々に指揮するためであった。

「どう考えてもカップル向けの店だからひとりで来るわけにもいかないし、かといって下手に女性を誘ってあらぬ誤解を招くのもどうかと思ってね」
「なるほど」

今の説明で理解できた。こういう店で食事をしても妙な期待を抱いたりしない女として自分が選ばれたというわけらしい。

雪雅は社内でも当然のようにものすごくモテる。だが女性関係の醜聞はいっさい聞いたことがなかった。本当にクリーンなのか、隠すのがうまいのか。真相は知らないけれど、彼はその手の噂が自分の評価をさげ、仕事に支障をきたしかねないことをきちんと理解しているのだろう。そういう点でも雪雅はソツのない男だった。

「……気を悪くした?」

芽衣子がそうは思っていないことを認識したうえで、聞いている。そんな表情だ。

「いいえ。納得できる答えをいただけて安心しました」