今日も推しが尊いので溺愛は遠慮いたします!~なのに推しそっくりな社長が迫ってきて!?~

そうして迎えた金曜日。

雪雅に連れられてやってきたのは、オシャレな創作フレンチの店だった。隠れ家風というのだろうか。神楽坂の裏通りに小さな扉があり、そこから階段をのぼる。看板をなにも出ていない木の扉を開けると、そこには驚くほどラグジュアリーな空間が広がっていた。明度を落としたムードたっぷりの間接照明、黒を基調とした和モダンの内装、飾られた絵画や調度も洗練されている。

シェフが立つ大きな鉄板の前のカウンター席にはモデル並みの美男美女がシャンパングラスを片手に語らいを楽しんでいた。

(す、すごい。ドラマのワンシーンみたい)

デートというものからだいぶ縁遠くなっている芽衣子の脳内には、そんな感想しか浮かんでこない。

彼が予約してくれていたのはカウンター席ではなく、個室だった。茶室のにじり口を思わせる小さな引き戸からなかに入るのだが……慣れないので、もたついてしまう。

そんな芽衣子の前に、長い指の美しい手がスッと差し出される。

「はい、つかまって」

先に入室していた雪雅が本物の貴族かと思うような優雅さでエスコートしてくれた。

(あ……ルイさんもこんなシチュあったよね)

ふと大好きだったスチルが頭をよぎったけれど、画面と現実はやはり違う。

雪雅の手の大きさと温かさ。それからふわりと鼻をくすぐる彼の香り。爽やかで清潔なのに、どことなく官能的でもある。

(さ、三次元は刺激が強すぎるわ)