「えぇ⁉ そんなあくどい男のもとに理衣子をなんて絶対にダメよ」
「わかってるわよ。ただの嫌がらせで向こうだって本気ではないと思うし……」
(でも、万が一にも理衣子になにかされたら)
芽衣子の胸に不安が押し寄せる。両親だって同じだろう。倒れた父だけでなく、母も以前に会ったときより痩せた気がする。
(こうして両親を弱らせて言うことを聞かせようというのが、きっとオーナーの狙いなのよね。悔しい)
芽衣子はグッと爪の痕が残るほどにこぶしを握った。
「あの」
黙ってやり取りを聞いていた雪雅がそこで口を挟む。彼は胸ポケットから名刺を差し出し、母に手渡す。
「私はこの業界では顔がきくほうですし、弁護士や警察関係の友人もいます。力になれることがあると思うので、いつでもご連絡ください」
「……夏目社長」
たとえ社交辞令でも嬉しい言葉だった。母もちょっと涙ぐみつつ何度も頭をさげている。
それから、芽衣子は雪雅を駐車場まで送りに行く。
「こんなに遅い時間まで本当にありがとうございました」
彼はこれから東京まで戻ることになる。彼のプライベートな時間をずいぶん奪ってしまった。
「いや、夜のドライブは結構好きなんだ。気にしないで」
「それに私の実家のゴタゴタ話まで聞かせてしまって」
ここまで送ってもらったのもかなり図々しいのに、そのうえ悩み相談まで。父の無事がわかり冷静になると申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
「さっきの言葉は本心だよ。君にもお母さんにも、いつでも頼ってほしい」
誠実な口ぶりから彼が本心から言ってくれているのだと伝わる。芽衣子は素直にうなずいた。
「ありがとうございます」
「君は俺の大切な秘書だ。力になりたいと思っている」
夏の夜のぬるい風に彼の前髪がさらりとなびく。注がれる強い眼差しに芽衣子は身じろぎもできなかった。
「わかってるわよ。ただの嫌がらせで向こうだって本気ではないと思うし……」
(でも、万が一にも理衣子になにかされたら)
芽衣子の胸に不安が押し寄せる。両親だって同じだろう。倒れた父だけでなく、母も以前に会ったときより痩せた気がする。
(こうして両親を弱らせて言うことを聞かせようというのが、きっとオーナーの狙いなのよね。悔しい)
芽衣子はグッと爪の痕が残るほどにこぶしを握った。
「あの」
黙ってやり取りを聞いていた雪雅がそこで口を挟む。彼は胸ポケットから名刺を差し出し、母に手渡す。
「私はこの業界では顔がきくほうですし、弁護士や警察関係の友人もいます。力になれることがあると思うので、いつでもご連絡ください」
「……夏目社長」
たとえ社交辞令でも嬉しい言葉だった。母もちょっと涙ぐみつつ何度も頭をさげている。
それから、芽衣子は雪雅を駐車場まで送りに行く。
「こんなに遅い時間まで本当にありがとうございました」
彼はこれから東京まで戻ることになる。彼のプライベートな時間をずいぶん奪ってしまった。
「いや、夜のドライブは結構好きなんだ。気にしないで」
「それに私の実家のゴタゴタ話まで聞かせてしまって」
ここまで送ってもらったのもかなり図々しいのに、そのうえ悩み相談まで。父の無事がわかり冷静になると申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
「さっきの言葉は本心だよ。君にもお母さんにも、いつでも頼ってほしい」
誠実な口ぶりから彼が本心から言ってくれているのだと伝わる。芽衣子は素直にうなずいた。
「ありがとうございます」
「君は俺の大切な秘書だ。力になりたいと思っている」
夏の夜のぬるい風に彼の前髪がさらりとなびく。注がれる強い眼差しに芽衣子は身じろぎもできなかった。



