「お母さん! 夏目さんは私の上司、うちの会社の社長さんなの」
芽衣子は大急ぎで母の認識を訂正する。
「お母さんから連絡をもらったときに、たまたま一緒にいて。ご厚意でここまで送ってくださったのよ」
「まぁ!」
社長だと伝えたことで、ようやく自身の勘違いに気づいてくれたようだ。芽衣子はホッとして続ける。
「例のオーナーの件も相談に乗ってもらったのよ。社長は不動産業界の事情に詳しいから」
母は雪雅に顔を向け、「ご親切にありがとうございます」と頭をさげた。
「かなり強引な人物だと芽衣子さんから聞きましたが、大丈夫ですか」
雪雅に優しく心配され、母は素直にため息を落とす。
「最近ちょっとね、嫌がらせみたいなマネをしてくるのよ」
「えぇ、そうなの?」
「店が一番混雑している時間にわざわざやってきてね、お客さんに聞こえるようにうちの資金繰りがよくないなんて言うの」
客の立場で聞いていたら、まるで店側に問題があるかのように話すのだそうだ。
「それだけじゃなくて、お父さんが一番悩んでいたのは……あのオーナーさん、どうも理衣子を気に入ったみたいで」
「理衣子を?」
自分よりマメに実家に顔を出している芽衣子はオーナーとも何度か面識があるらしい。母は声をひそめてささやいた。
「理衣子と結婚させてくれるのなら家賃はそのままでいい、なんて言うのよ」
芽衣子は大急ぎで母の認識を訂正する。
「お母さんから連絡をもらったときに、たまたま一緒にいて。ご厚意でここまで送ってくださったのよ」
「まぁ!」
社長だと伝えたことで、ようやく自身の勘違いに気づいてくれたようだ。芽衣子はホッとして続ける。
「例のオーナーの件も相談に乗ってもらったのよ。社長は不動産業界の事情に詳しいから」
母は雪雅に顔を向け、「ご親切にありがとうございます」と頭をさげた。
「かなり強引な人物だと芽衣子さんから聞きましたが、大丈夫ですか」
雪雅に優しく心配され、母は素直にため息を落とす。
「最近ちょっとね、嫌がらせみたいなマネをしてくるのよ」
「えぇ、そうなの?」
「店が一番混雑している時間にわざわざやってきてね、お客さんに聞こえるようにうちの資金繰りがよくないなんて言うの」
客の立場で聞いていたら、まるで店側に問題があるかのように話すのだそうだ。
「それだけじゃなくて、お父さんが一番悩んでいたのは……あのオーナーさん、どうも理衣子を気に入ったみたいで」
「理衣子を?」
自分よりマメに実家に顔を出している芽衣子はオーナーとも何度か面識があるらしい。母は声をひそめてささやいた。
「理衣子と結婚させてくれるのなら家賃はそのままでいい、なんて言うのよ」



