さっきは気が動転していて彼の提案を受け入れてしまったけれど、よくよく考えればあまりにも図々しかった。同期や仲良しの先輩ならともかく……彼は自分の会社の社長。そしてゆくゆくはナツメグループ、ひいてはこの国の財界を率いていく立場の人なのだから。
ハンドルを握り、フロントガラスを見つめたままで雪雅は小さく首を横に振る。
「こんなこと、ではないな。大切な秘書の一大事なんだから。君は余計な気を回さずにお父さんのことだけを考えていて」
彼の優しさが胸に染みた。
「大丈夫。きっとなんでもないよ」
自分が言い聞かせていた言葉とまったく同じなのに、彼に言われると素直に信じられる気がした。
「……ありがとうございます。あの、社長」
「ん?」
「少しご相談をしてもよろしいでしょうか?」
父の悩みの種である新オーナーの件、芽衣子なりに色々調べてはみたもののいくつかわからない点もあって、それを彼に聞いてみようと思った。
プライベートのことを相談するのは図々しいと承知しているけれど、倒れたという父の負担を少しでも減らしてあげたい気持ちが勝った。秘書職である自分よりずっと、雪雅は法的な問題にも業界の慣習にも詳しい。彼の意見を聞いてみたかった。
雪雅は親身になって話を聞いてくれる。
「なるほどね。基本的に笹原の意見は正しいよ。契約期間中の権利は保証されているから、今はオーナーの要望を突っぱねることができる。もちろん次の更新のタイミングでは協議になるだろうけどね」
「そうですよね。次の契約更新まであと二年はあるんです。そのタイミングでっていうお話なら両親も準備ができると思うのですが」
雪雅はかすかに眉根を寄せ、低い声で続けた。
「オーナーは不動産会社を経営しているんだよな。なら、この程度の知識は当然持っているはず。わかっていてやっているのなら……質が悪いかもしれないな」
芽衣子も同じ心配をしていた。つまり正論が通じない相手なのじゃないかと。
ハンドルを握り、フロントガラスを見つめたままで雪雅は小さく首を横に振る。
「こんなこと、ではないな。大切な秘書の一大事なんだから。君は余計な気を回さずにお父さんのことだけを考えていて」
彼の優しさが胸に染みた。
「大丈夫。きっとなんでもないよ」
自分が言い聞かせていた言葉とまったく同じなのに、彼に言われると素直に信じられる気がした。
「……ありがとうございます。あの、社長」
「ん?」
「少しご相談をしてもよろしいでしょうか?」
父の悩みの種である新オーナーの件、芽衣子なりに色々調べてはみたもののいくつかわからない点もあって、それを彼に聞いてみようと思った。
プライベートのことを相談するのは図々しいと承知しているけれど、倒れたという父の負担を少しでも減らしてあげたい気持ちが勝った。秘書職である自分よりずっと、雪雅は法的な問題にも業界の慣習にも詳しい。彼の意見を聞いてみたかった。
雪雅は親身になって話を聞いてくれる。
「なるほどね。基本的に笹原の意見は正しいよ。契約期間中の権利は保証されているから、今はオーナーの要望を突っぱねることができる。もちろん次の更新のタイミングでは協議になるだろうけどね」
「そうですよね。次の契約更新まであと二年はあるんです。そのタイミングでっていうお話なら両親も準備ができると思うのですが」
雪雅はかすかに眉根を寄せ、低い声で続けた。
「オーナーは不動産会社を経営しているんだよな。なら、この程度の知識は当然持っているはず。わかっていてやっているのなら……質が悪いかもしれないな」
芽衣子も同じ心配をしていた。つまり正論が通じない相手なのじゃないかと。



