「あ、申し訳ありません」
「いや、待っているから出て構わないよ」
芽衣子の電話を聞かないようにとの配慮だろう。彼はさりげなく距離を置いてくれる。芽衣子は慌てて応答ボタンを押す。
「あぁ、お母さん。悪いけど、まだ仕事中だからあとでかけ直す……えっ、お父さんが⁉」
例のオーナーがまたなにか言ってきたのかと思ったが、そうではなかった。
父が急に倒れ、救急車で運ばれたそうだ。
『お父さん、家賃の値上げの件ですごく悩んでいたからストレスがかかったのかしら』
これまで聞いたことないくらいに不安げな母の声。値上げを要求するオーナーからの圧力は日に日にひどくなっていたらしい。
「とにかく、私もすぐにそっちに行くから。病院が決まったら教えてね」
通話を終えた芽衣子のもとに、いつの間にか雪雅が戻ってきていた。
「なにかあったのか? 病院とかって聞こえたが……」
「あ、その……」
父は健康には気を使っているほうで、これまで大きな病気をしたことがなかった。そんな父が救急車を呼ぶような状況だというだけで芽衣子の動揺は大きく、うまく言葉が出てこない。雪雅の温かい手がそっと芽衣子の肩に添えられる。
「大丈夫か。深呼吸をして」
「は、はい」
「いや、待っているから出て構わないよ」
芽衣子の電話を聞かないようにとの配慮だろう。彼はさりげなく距離を置いてくれる。芽衣子は慌てて応答ボタンを押す。
「あぁ、お母さん。悪いけど、まだ仕事中だからあとでかけ直す……えっ、お父さんが⁉」
例のオーナーがまたなにか言ってきたのかと思ったが、そうではなかった。
父が急に倒れ、救急車で運ばれたそうだ。
『お父さん、家賃の値上げの件ですごく悩んでいたからストレスがかかったのかしら』
これまで聞いたことないくらいに不安げな母の声。値上げを要求するオーナーからの圧力は日に日にひどくなっていたらしい。
「とにかく、私もすぐにそっちに行くから。病院が決まったら教えてね」
通話を終えた芽衣子のもとに、いつの間にか雪雅が戻ってきていた。
「なにかあったのか? 病院とかって聞こえたが……」
「あ、その……」
父は健康には気を使っているほうで、これまで大きな病気をしたことがなかった。そんな父が救急車を呼ぶような状況だというだけで芽衣子の動揺は大きく、うまく言葉が出てこない。雪雅の温かい手がそっと芽衣子の肩に添えられる。
「大丈夫か。深呼吸をして」
「は、はい」



