君に花を贈る

「あ、ここだ」

 十分も歩かないうちに藤乃さんが立ち止まった。
 和の雰囲気が漂う店構えで、かき氷ののぼりが風にはためいている。
 店内はそこそこ混んでいたけれど、窓際の二人席がちょうど空いていて、すぐに案内された。
 藤乃さんは流れるように奥の席を勧めてくれるし、荷物を入れるカゴも、当たり前のように私に向けてくれる。
 ……そういうふうにされたことがあまりないから、ひとつひとつ、どう反応すればいいのかわからない。

「何食べる? ここのおすすめはあんみつらしいんだけど……暑いからね」

 メニューを向けられて悩む。……メニューもさらっと二人で見やすいように横に向けつつ、ちょっと私の方に寄せてくれている。
 やっぱり、慣れてるのかなあ……。

「そうですね……じゃあ、ソフトあんみつにしようかな。でも、季節限定の氷小豆もおいしそうです。昨日から始まったばかりって書いてありますね」
「じゃあ、それ両方頼んで半分こしようか」
「……須藤さんって、こういうの慣れてるんですか?」
「なにが?」

 思わず聞いてしまったら、藤乃さんはきょとんと首をかしげた。……しまったなあ、これ、ちょっと面倒な女みたいだ。

「すみません、なんだか……全部がスマートだから、女の子と出かけるのに慣れてるのかなって……」
「そう見える? 女の子と出かけるの、初めてだよ。手汗びっしょりだし、このお店も、花音ちゃんが誘ってくれたから一生懸命探したし」
「えっ、そうなんですか……?」

 藤乃さんが手のひらを私に向けてくる。たしかに、じっとり汗をかいていた。

「うん。車もね、女の子を隣に乗せたの初めてだから、めっちゃ緊張しながら運転してた。助手席のドア、開けてあげればよかったなーって、ずっと後悔してたし」
「そ、そうだったんですね……」

 何て言っていいかわからなくて、返事に詰まっていたら、タイミングよく店員さんが注文を取りに来てくれた。
 藤乃さんが注文して、あんみつもかき氷もすぐに出てくる。

「おいしい! おいしいです!」
「こっちもおいしい。久しぶりに食べたけど、あんみつって、やっぱうまいね」

 二人であれこれ言いながら、楽しく食べる。半分ずつ食べて、途中で交換して、もう一つの味も楽しんだ。
 おいしいのはもちろんだけど、向かいで食べてる藤乃さんの口が大きくて、なんだかドキドキする。一口の量が私とぜんぜん違う。
 瑞希も同じはずなのに、なんで藤乃さんだとこうなるんだろ……。
 食べ終わって店を出ると、すっかり外は夕方で、空がオレンジ色になっていた。