篠森さんが立ち去ると、すぐに。
私もベンチから立ち上がって、山口の研究室に向かうことにした。
彼の顔は見たくない。
少なくとも、当分は。
だけど、私の記憶喪失の件について、何か進展があったのなら。
それは、後回しにする訳にはいかなかった。
もしかして、私の記憶喪失の原因が分かったのだろうか。
それとも、失われた記憶の戻し方が分かった、とか。
そこまで期待している訳じゃない…けれど。
やはり、聞かずにはいられなかった。
「…山口。来たよ」
私は、5階の研究棟フロアにある、山口教授の研究室を訪ねた。
「おっ、皆宮。早かったな。すぐ来てくれたのか?」
…。
嬉しそうなところ悪いけど、あなたに会いに来た訳じゃないから。
ただ、篠森さんに伝言を伝えられたから。
記憶喪失の件で進展があったなら、それを聞きたいと思って来ただけだから。
そうでなければ、誰があなたなんかと…。
「…それで、用件は何なの?」
我ながら、刺々しい口調なのは自覚している。
「なんだ、皆宮…。機嫌悪いなぁ」
「良いから、早く話して」
話さないなら、帰るよ。
「分かってる、分かってる。話すよ」
「私の記憶喪失…。…治せるの?」
「いや、残念ながら治し方の目処は立ってない」
「…」
…使えない人ね。
「酷いなぁ。露骨にそんな嫌そうな顔、する?」
「…」
「大体、記憶が戻ったからって、それが君にとって良い結果になるとは思えないけどな」
…何?
「忘れてしまったなら、忘れたままの方が幸せ…ってことはない?…特に、仲間の死に敏感な君は」
「っ…」
…いちいち、癪に障る言い方をする。
記憶が戻ったら、私は…今度は、武藤くん達や、近江さんだけじゃない。
これまで私と出会って、先に死んでいった全ての同族達の死を、思い出すことになる。
それは私にとって、とても辛い記憶…。
…だったら、このまま忘れたまま。
思い出さない方が、私にとっては幸せ。
…その言い分も、分からなくはない。
それが山口なりの「優しさ」であるということも。
でもね、そんなものは、私の望むことじゃない。
「思い出せずに、辛い思いをするよりは…」
「うん?」
「思い出して、後悔した方がマシよ」
「…成程、そういう考えもあるか」
例え、それが酷く辛いものであっても。
自分が「辛かった」という記憶を、忘れてしまうことよりも辛いことはない。
今の私は、そんな風に思ってる。
私もベンチから立ち上がって、山口の研究室に向かうことにした。
彼の顔は見たくない。
少なくとも、当分は。
だけど、私の記憶喪失の件について、何か進展があったのなら。
それは、後回しにする訳にはいかなかった。
もしかして、私の記憶喪失の原因が分かったのだろうか。
それとも、失われた記憶の戻し方が分かった、とか。
そこまで期待している訳じゃない…けれど。
やはり、聞かずにはいられなかった。
「…山口。来たよ」
私は、5階の研究棟フロアにある、山口教授の研究室を訪ねた。
「おっ、皆宮。早かったな。すぐ来てくれたのか?」
…。
嬉しそうなところ悪いけど、あなたに会いに来た訳じゃないから。
ただ、篠森さんに伝言を伝えられたから。
記憶喪失の件で進展があったなら、それを聞きたいと思って来ただけだから。
そうでなければ、誰があなたなんかと…。
「…それで、用件は何なの?」
我ながら、刺々しい口調なのは自覚している。
「なんだ、皆宮…。機嫌悪いなぁ」
「良いから、早く話して」
話さないなら、帰るよ。
「分かってる、分かってる。話すよ」
「私の記憶喪失…。…治せるの?」
「いや、残念ながら治し方の目処は立ってない」
「…」
…使えない人ね。
「酷いなぁ。露骨にそんな嫌そうな顔、する?」
「…」
「大体、記憶が戻ったからって、それが君にとって良い結果になるとは思えないけどな」
…何?
「忘れてしまったなら、忘れたままの方が幸せ…ってことはない?…特に、仲間の死に敏感な君は」
「っ…」
…いちいち、癪に障る言い方をする。
記憶が戻ったら、私は…今度は、武藤くん達や、近江さんだけじゃない。
これまで私と出会って、先に死んでいった全ての同族達の死を、思い出すことになる。
それは私にとって、とても辛い記憶…。
…だったら、このまま忘れたまま。
思い出さない方が、私にとっては幸せ。
…その言い分も、分からなくはない。
それが山口なりの「優しさ」であるということも。
でもね、そんなものは、私の望むことじゃない。
「思い出せずに、辛い思いをするよりは…」
「うん?」
「思い出して、後悔した方がマシよ」
「…成程、そういう考えもあるか」
例え、それが酷く辛いものであっても。
自分が「辛かった」という記憶を、忘れてしまうことよりも辛いことはない。
今の私は、そんな風に思ってる。


