「じゃ、一緒に訓練室に行こうか。案内してやるよ」
と、此代が誘ってくれた。
記憶喪失の私には、とても有り難い。
…けれど。
「ありがとう。…でも、その前に私…山口に会いに行かなきゃ」
昨日の…シンクロ率の測定結果を聞かなければ。
「山口教授のところか…。そっか、分かった」
「先に行っててくれる?私、山口の研究室に寄ってから行く」
「あぁ、分かった」
頷いて、此代は一人、先に1階に降りていった。
…さてと。
それじゃ私は…昨日、篠森さんに案内してもらった道を通って。
5階の…山口のところに行くとしよう。
「…山口。入るよ」
「…あれ?皆宮じゃん」
「…」
山口の研究室には、どうにも鼻をつく、食品添加物の匂いが充満していた。
それもそのはず。
山口はデスクの上に、パソコンでも、資料のファイルでもなく。
湯気を立てるカップラーメンの蓋を開けて、そこに粉末スープを混ぜている途中だった。
…うぇ。
「…窓、開けなよ」
「えー。寒いからやだよ」
…。
山口は私の忠告も聞かず、そのままカップラーメンに向かい合い。
割り箸をパキッと割って、粉末スープをかき回し始めた。
更に、強く立ち昇るカップラーメンの香り。
…うぇ。
「何だか、気持ち悪い…」
「そう?良い匂いだと思うけど」
これが良い匂い…?冗談じゃない。
私にとっては、ただの異臭以外の何物でもなかった。
「竜は人間よりずっと語感が優れていたそうだから、当然嗅覚も秀でていた。…そのせいかもね」
粉末スープが充分、お湯に溶けてから。
ふーふー、と息を吹きかけて、山口はそう言って、まずはカップラーメンのスープを啜った。
ラーメンはスープから楽しむ派。
…って、そんな山口の嗜好よりも。
「竜の嗅覚…。ってことは、私も普通の人間よりは鼻が良いの?」
「その可能性がある」
「…ふーん…」
「そもそも君達竜人は、人間にとって当然の『食事』をする必要がないからね。食べ物の匂いを『良い匂い』だと感じないのは、それが理由の一つ、でもある」
「…」
…言われてみれば。
私は昨日目を覚ましてから、一度も食事をしていない。
「お腹が空く」という、人間にとっては当たり前の現象がない。
食事をする必要がない。…私が竜人だから。
「そういう点でも、竜は人間より優れた種族と言えるね。生きる為に、他の生き物を殺す必要がないんだから」
植物みたいに、光合成でもしているのかもね。
…日光にも当たってないけど、私。
「羨ましいなぁ。俺なんか、一日に三回も食事しなきゃいけない。面倒だよ」
「…」
「おまけに、ここの食事は味よりも栄養価重視で、端的に言ってマズい。施設の周囲を湖で囲まれているせいで、外に食べに行くってことも出来ない」
「…」
「物資の搬入も容易じゃないからね。ついつい、栄養補助食品とか、こういう乾いた保存食ばっかりになる。…まったくつまらないよ」
…とか言いながら。
山口は、非常に不本意そうに、ずぞぞー、っとカップラーメンの麺を啜り上げた。
と、此代が誘ってくれた。
記憶喪失の私には、とても有り難い。
…けれど。
「ありがとう。…でも、その前に私…山口に会いに行かなきゃ」
昨日の…シンクロ率の測定結果を聞かなければ。
「山口教授のところか…。そっか、分かった」
「先に行っててくれる?私、山口の研究室に寄ってから行く」
「あぁ、分かった」
頷いて、此代は一人、先に1階に降りていった。
…さてと。
それじゃ私は…昨日、篠森さんに案内してもらった道を通って。
5階の…山口のところに行くとしよう。
「…山口。入るよ」
「…あれ?皆宮じゃん」
「…」
山口の研究室には、どうにも鼻をつく、食品添加物の匂いが充満していた。
それもそのはず。
山口はデスクの上に、パソコンでも、資料のファイルでもなく。
湯気を立てるカップラーメンの蓋を開けて、そこに粉末スープを混ぜている途中だった。
…うぇ。
「…窓、開けなよ」
「えー。寒いからやだよ」
…。
山口は私の忠告も聞かず、そのままカップラーメンに向かい合い。
割り箸をパキッと割って、粉末スープをかき回し始めた。
更に、強く立ち昇るカップラーメンの香り。
…うぇ。
「何だか、気持ち悪い…」
「そう?良い匂いだと思うけど」
これが良い匂い…?冗談じゃない。
私にとっては、ただの異臭以外の何物でもなかった。
「竜は人間よりずっと語感が優れていたそうだから、当然嗅覚も秀でていた。…そのせいかもね」
粉末スープが充分、お湯に溶けてから。
ふーふー、と息を吹きかけて、山口はそう言って、まずはカップラーメンのスープを啜った。
ラーメンはスープから楽しむ派。
…って、そんな山口の嗜好よりも。
「竜の嗅覚…。ってことは、私も普通の人間よりは鼻が良いの?」
「その可能性がある」
「…ふーん…」
「そもそも君達竜人は、人間にとって当然の『食事』をする必要がないからね。食べ物の匂いを『良い匂い』だと感じないのは、それが理由の一つ、でもある」
「…」
…言われてみれば。
私は昨日目を覚ましてから、一度も食事をしていない。
「お腹が空く」という、人間にとっては当たり前の現象がない。
食事をする必要がない。…私が竜人だから。
「そういう点でも、竜は人間より優れた種族と言えるね。生きる為に、他の生き物を殺す必要がないんだから」
植物みたいに、光合成でもしているのかもね。
…日光にも当たってないけど、私。
「羨ましいなぁ。俺なんか、一日に三回も食事しなきゃいけない。面倒だよ」
「…」
「おまけに、ここの食事は味よりも栄養価重視で、端的に言ってマズい。施設の周囲を湖で囲まれているせいで、外に食べに行くってことも出来ない」
「…」
「物資の搬入も容易じゃないからね。ついつい、栄養補助食品とか、こういう乾いた保存食ばっかりになる。…まったくつまらないよ」
…とか言いながら。
山口は、非常に不本意そうに、ずぞぞー、っとカップラーメンの麺を啜り上げた。


