宗主国の皇女は、属国で幸せを見つける

市長はアメリアを下がらせようと彼女の肩を少し押したのだが、
アメリアはよろけて転んでしまった。
その拍子にカップケーキは地面に転がってしまう。
「うえーーーーん」
アメリアは大声で泣き出してしまった。
娘の声を聞きつけた彼女の母親が飛んできて、
急いで娘を抱き上げて平謝りする。
「申し訳ございません。まだ幼い娘のしたことですのでどうかお許しを。」
「だってだって！王妃様は食べてくれたもん。美味しいって言ってくれたもん！」
「フィロメナも食べたのか？」
「そうだよ。今度来た時に作り方教えてあげるねって、約束したのよ。」
オルランドの問いにアメリアは得意気に答えるが
彼女の母親はまずいことを言ったのではと、
しどろもどろになっている。
「このカップケーキにはここの特産のベリーを使っておりまして、それを王妃様にお話ししたらぜひ食べてみたいとおっしゃってくださったのです。王族の方に勝手なことをしてしまって申し訳ございません！」
「いや、なにも責めているわけではないのだ。そうか、王妃も食べたのか。ならば私もいただこう。」

オルランドのまさかの申し出にアメリアの母はポカンとしたが、
すぐに我に返って新しいカップケーキを用意する。
そのカップケーキを受け取り、ためらうことなく口に入れた。
「上手い。」
オルランドの一言に、
さっきまで泣いていたアメリアに笑顔が戻った。
「今日来れなかった王妃への土産として、包んでもらえないだろうか。」
「もちろんです！何個でも持って帰ってくださいな。」