宗主国の皇女は、属国で幸せを見つける

「そんな依頼、私たちは受け取ったことなどありませんでしょう?百聞は一見にしかずですから、陛下もその様をご覧になるとよろしいかと。そうすれば嫌でも理解できます。国民たちのために、フィロメナ様は王妃でいていただかなくてはならないと。」

サレハがここまで言うなら、
ぜひ自分の目で確かめなくてはと
オルランドは決意する。

「生まれがどうとか気にしているのは貴族たちだけです。国民にとって大事なのは、王族がどれほど自分たちを大切に思ってくれているかということです。国民を省みることなどほとんどしていなかった私は、大いに反省させられました。」
「サレハ、君は変わったな。今までは王太后にべったりだと思っていたが。」
「父と別れ、母を亡くした私にとって王太后陛下が唯一の後ろ盾でした。彼女の庇護下にあるということが何よりの安心だと思っていたのです。母のこともあって、私は政略結婚に後ろ向きでもありましたから。けれど、あの人に出会って異国で生きる覚悟ができました。単に、私にも親離れの時期が来ただけですわ。離れる祖国のために最善だと思うことをしておかなければ。」
「なるほど。君がそこまでこの国のことを考えてくれていたとは嬉しいよ。改めて結婚おめでとう。兄として最大の祝福を贈ろう。」
「ありがたき幸せでございます、陛下。」