宗主国の皇女は、属国で幸せを見つける

フィロメナはギプスを右手でさすりながら
小さいため息をつく。
そしてオルランドが聞きたくなかったことを告げた。
「陛下。私はもう王妃の座を辞したいと思っています。」

レナートからは聞いていた話だが、
フィロメナから直接言われると
ショックの度合いが違った。
「それは、、、認めることはできない。」
オルランドは静かに返答する。
「陛下もご存知でしょう?陛下の忠臣たる貴族たちは私が王妃であることに反対しているのです。その声を無視して留まり続けた結果がこれですわ。今回は怪我で済みましたけど、次はどうなるか分かりません。私は静かに暮らしたいのです。」
「貴族たちは私が説得する。王妃に危害が及ばないように、これからは専属の護衛騎士を近衛兵の中から選抜しよう。」
「そのようなことはしていただかなくて大丈夫です。陛下がどれだけ心を砕かれても、人の気持ちはそんなに簡単に変わりません。私の気持ちだって。」
「それを言うなら私の気持ちも変わらない。王妃を手放すことはしない。」
「私は今までずっと耐えてきました。これからもそうしろと仰るのですか?まるで拷問だわ。」
「今までのことは私に全面的に非がある。だが、これからはもう王妃を1人にするつもりはない。」
「少しでも私のことを思ってくださるなら、私を自由にしてください。誰もが認める女性と新しく縁を結べば、全て丸く収まります。」