宗主国の皇女は、属国で幸せを見つける

その日以降、
オルランドの中で
フィロメナの存在が日増しに大きくなっていった。
朝、いつもと変わりない彼女の姿を見ると
どこか安心するし、
今日はどんなことをするのだろうと
気になるようにもなった。

一方のフィロメナは
何事もなかったかのようにいつもの無表情なので、
オルランド自身も戸惑うことも多かったが
それでも自分たちは夫婦なのだから
少しずつ距離を縮めていければ良いと思っていた。
そうやってのんびり構えていたら
フィロメナの異母兄マルヴァリス皇太子が
アルドレインにやって来た。
相変わらずの傍若無人ぶりに辟易したが
晩餐の招待は断われない。
嫌々ながらもフィロメナを伴って出席した。
この晩餐は
今までで一番胸糞悪いものだった。

マルヴァリスの自分語りは
右から左へ聞き流せばよいだけだったが、
あいつはフィロメナを標的にしだした。
彼女が妊娠しないことをなじり、
(ベットを共にしていないのだから当然だ)
挙げ句の果てに
自分が相手をしてやろうと言い出す始末。
俺がいる前で俺の妻を誘うなんて
どういう神経をしているんだ?
しかも半分血の繋がった妹だぞ。

フィロメナは俺のものだと
マルヴァリスに主張する意味も込めて
オルランドはフィロメナの手を握る。
この女性は誰にも渡さないし、
自分が守ってやらなければならないという
確かな思いをこの時自覚した。