宗主国の皇女は、属国で幸せを見つける

「王妃様。そんな風に御自分を貶めるのは辞めてください。それに、あんな男の言うことに囚われてはなりません。王妃様はそのままでとても美しく、魅力的な女性です。」
これはお世辞でも何でもなく、
レナートの本心だった。

しかし、
エスメリアの血を引いているというだけで
男たちから下心を向けられてきたフィロメナには
なかなか届かないようだ。

「マルヴァリスお兄様だけじゃないの。いろんな男性から、色眼鏡で見られてきたわ。でも、もうそんな目で見られるのは嫌。私を解放してほしい。」
レナートがいくらなだめても、
フィロメナは頑なに自分の意思を曲げなかった。
そうならざるを得ないほど、
今回の出来事がフィロメナの心に
決定的なダメージを与えたということだ。
「これ以上どうすればいいの?こんな怪我までしてしまって、また皆さんの前に立てるほど、私は心の強い女ではないもの。」

「王妃様のお気持ちは十分理解しました。しかしながら、やはり私の一存では決められません。国王陛下がお帰りになるまでお待ちいただけませんか。それまでは離宮でゆっくりお過ごしください。あちらは人の訪れもなく、静養できますから。」
このレナートの提案にフィロメナは同意した。
確かにオルランドかいない場で
勝手に進められる話ではない。