宗主国の皇女は、属国で幸せを見つける

フィロメナが目を覚ましたのは翌日のことだった。
目を開けた瞬間に飛び込んできたのは
目を真っ赤にしたマーゴの顔だ。

「王妃様っ!目を覚まされたのですね。」
ずっと看病してくれていたのだろう。
マーゴの目の下にはクマができていた。

「のどが渇いたわ。」
水を飲もうと起き上がろうとした途端、
激痛が身体を襲う。
その痛みとともに昨日の出来事が思い出された。
なんで私ばかりこんなめに合うんだろう。
私は前世で一体どんな悪いことをしたんだろうか。

マーゴに身体を起こしてもらい、
ストローで水を飲みながらフィロメナは自問した。
自分がなんのために頑張っているのか、
もう分からない。
令嬢たちに詰め寄られ、
階段から落ちて大けがを負ったことで
フィロメナの心も折れてしまった。
もう嫌だ。こんなところ逃げ出したい。
帝国の命で嫁いできたのに、
もはや帝国からは見放されている。
かといってこの国に受け入れられているかと言えば
全然そんなことはない。
この「逃げ出したい」という気持ちは、
フィロメナの中でどんどん大きく膨らんでいった。