宗主国の皇女は、属国で幸せを見つける

「マーゴ、入っても構わないだろうか。」
レナートはマーゴに断りを入れて
フィロメナの私室に入る。
ここに入るのは初めてだ。
明るい色調で調えられた室内には
美しい刺繍が施されたレースや
花柄のクッションが置かれており、
何とも女性らしい部屋だ。
普段の地味でキツい印象のフィロメナからは
想像できないが、
これが本来の彼女らしさなのだろう。

フィロメナはベットの中で眠っていた。
痛々しい包帯さえなければ
天使のような愛らしい寝顔だ。
内出血を起こしているところは
既に青くなってしまっており、
マーゴたちが懸命に冷やしている。

「王妃様がこんなことになってしまったのは私のせいだ。」
フィロメナの寝顔を見て、
レナートは項垂れた。

「王妃様をこんな目に合わせた犯人は分かっているのですか?」
涙で頬を濡らしながらマーゴが問いかける。
「あぁ、令嬢たちはその場で拘束した。」
「これは立派な犯罪です!王妃様への侮辱罪ですわ。どこの令嬢か存じ上げませんが、必ずや然るべき罪に問うてください。王妃様、お可哀想に。こんなにお顔が腫れてしまって。」

これ以上フィロメナの顔を見ることが出来ず、
レナートは退室した。
令嬢たちの中には宮廷でも権力を握る
有力者の娘もいたが、
絶対にうやむやにはさせないと
そう心に誓って。