宗主国の皇女は、属国で幸せを見つける

フィロメナの居室には
すぐさま医者と看護師が呼び寄せられ、
懸命な治療が施された。
フィロメナが戻ってきた時は
ひどく動揺していたマーゴも
すぐに切り替えて医療チームのサポートに当たっている。
フィロメナの治療中、
レナートは部屋の前でずっと待機していた。

すっかり日が西に傾いた頃、
治療に当たっていた医師と看護師が出てきた。
「王妃様の容態は?」
レナートはすぐさま質問する。
「レナート様、落ち着いてください。幸い、王妃様の命に別状はございません。ただ顔を含めた全身の打撲と、左腕は骨折されています。骨折部位は私の方で固定しました。また、内出血や腫れを抑えるために包帯で患部を圧迫しています。完治されるまでしばらくかかるでしょう。」
「具体的にはどれくらい?」
「打撲については2週間すれば治まると思いますが、骨折はもう少しかかるでしょうなぁ。」
「そうですか、ありがとうございます。」

医師と看護師を見送った後、
レナートは激しい後悔に襲われた。
なぜフィロメナに護衛をつけなかったのか。
いや、そもそも
王太后のお茶会に招かれたと
フィロメナから報告を受けた時に
なぜ確認を取らなかったのか。
そうすればそれが嘘の招待だと判明したのに。
こんなことになって、
オルランドにどう申し開きしたら良いのだろう。