宗主国の皇女は、属国で幸せを見つける

オルランドにそう諭されて、
サレハはもうそれ以上何か言うことはなかった。

見ず知らずの相手に嫁がなければならない不安は
フィロメナにもわかる。
ドラゴニア帝国の後宮を知るからこそ、
サレハが嫌がる気持ちも最もだと思う。
できることなら、
あんなところは絶対に行かない方がいい。

フィロメナ同様に
アルドレインの社交界はみな、
サレハ王女に同情した。
それと同時に一部の者たちは
フィロメナを非難していた。
「ドラゴニア帝国の人間なのだから、サレハ王女が嫁がなくて良いようになんとかとりなせ」と。

その筆頭が王太后である。
もともとフィロメナには
殊の外厳しかった王太后だが、
最近はその苛烈さが増し、
重箱の隅をつつくような
細かいことをあげつらっては、
フィロメナを厳しく叱責した。
叱責というより、
ただ感情的になって怒鳴りつける
という方が近いかもしれない。

おかげで
フィロメナは王太后の姿を見るだけで
胃がキリキリと痛み、
ストレスで体重が減ってしまうほどだった。

見兼ねたレナートがオルランドに報告し、
オルランド自らが王太后に注意してくれたが
国王に告げ口したとして
さらなる王太后の逆鱗に触れたため、
フィロメナは一人で耐えるしかないのである。