宗主国の皇女は、属国で幸せを見つける

「悔しいが、わが国だけではドラゴニア帝国に対抗できない。サレハを守るためには、ドラゴニア帝国と同じくらいの力を持つ国と組むしかない。」
「そんな国、現状ではヴァリニア王国しかないわ。でもあの国とは・・・」
「母上の言う通り、ヴァリニア王国とは今、パイプがありません。ただ幸いにも、我が妹アドリアーナがノルヴァンド王国の王家に嫁いでおります。アドリアーナの夫君を経由してヴァリニアと繋がれないか、昨夜未明に使者を出しました。」
「そうだったの。何か朗報が届くと良いけれど。」
少しホッとしたのか、
王太后は力なく椅子に腰を落とした。

「それでも、サレハが他国に嫁ぐことは変わらないだろう。その相手国がドラゴニアからヴァリニアに変わるだけだ。」
オルランドの言葉にサレハは項垂れる。
「私はこの国を出ていきたくありません。」
搾り出したかのような小さな声で
サレハは本音を吐露する。
「私だって無理強いしたくないが、お前の願望に全て応えてやる事もできない。ドラゴニアに嫁ぎたくなければ、ドラゴニアが容易に手出しできない国に行くしかない。それに、国のために結婚するのは王族の義務でもある。王族として恵まれた環境にいるからこそ、我々は国のために義務を果たさなければならない。みんなそうしてきたのだ、アドリアーナも、王妃も、そして私も。」