宗主国の皇女は、属国で幸せを見つける

アルドレイン王国の威信にかけて
華やかに開催された宴の席で
クレオールはとんでもないことを言い出した。

「皇帝陛下は既に高齢で、政務の多くは私が担っている。広大な帝国の領土を円滑に運営するために、周辺国とは親密な関係を維持したいと考えている。そこでだ、サレハ王女をぜひ我が後宮へ。」
この発言にはアルドレイン側が大きく動揺した。
名指しされたサレハ王女も狼狽えている。
「私が、ですか?」
「えぇ、貴女はまだ独身だと聞いています。一国の王女にとって皇太子の妃になれるなんて、これほど名誉なことはないでしょう。歓迎しますよ。」
クレオールはにこやかにそう言うが、
その目は全く笑っていない。

妃というと聞こえは良いが、
皇太子妃とイコールではない。
後宮に数多いる夫人の1人になれと言われているのだ。
サレハ王女はおし黙る。
本音では行きたくないが、
公然と拒否することもできないからだ。
そんなサレハ王女に代わって
声をあげたのが王太后である。
「皇太子殿下、なにもサレハを妃に娶らなくても、わが国には既に貴殿の妹姫が嫁いでおります。」
「妹?私の妹がどこにいるのかな?」
クレオールが平然と言ったのけた言葉に
フィロメナの顔が曇った。