宗主国の皇女は、属国で幸せを見つける

「王妃が気に病む必要はない。」
先ほどのレナートに向けた厳しい声色と打って変わって
優しい口調でフィロメナに語りかける。

「外野はいろいろ言ってくるだろうが、全て聞き流せ。どんなことがあっても、私は王妃を変えるつもりはない。」
「えぇ。」
「母上やサレハが王妃にいろいろ嫌がらせしているのも私の耳に入っている。すまない、私からもキツく言っておく。」
「えぇ。」

オルランドはそう言ってくれるが、
ここ最近の社交界からの嫌がらせに
フィロメナはまいってしまっていた。
フィロメナに聞こえるように
あからさまに悪口を言ったり、
足を引っ掛けて転ばそうとしたり。
フィロメナの私物がなくなったり、
壊されたりしたのも一度や二度ではない。
公務のスケジュールが変更になったのに
その旨を意図的に伝えられず
恥をかかされた事もあった。

マーゴやレナートが
影に日向に守ってはくれるものの、
精神的なダメージは確実に蓄積しており、
フィロメナは逃げるように
宮廷にいつかなくなっていた。
オルランドと顔を合わせるのも
週に2回ほど。
できるだけ地方の公務を入れてもらい、
泊りがけで公務をはしごする日々。
国民たちとの温かい交流は
傷ついたフィロメナの心を
ずいぶんと慰めてくれた。
そしてこの温かな交流が
その後のフィロメナに大きく影響することになる。