宗主国の皇女は、属国で幸せを見つける

「わが国もアドリアーナ様が未婚でいらっしゃったら、きっと参戦していたでしょうね。」
マーゴがそう言うと
他の侍女たちもお喋りに参加し始めた。
「あら、未婚の王女でしたらサレハ様もいらっしゃるではありませんか。」
「でもサレハ王女は国王陛下にご執心でしょ?」
「あらまだあの方、諦めてなかったの?」
「フィロメナ様が陛下といい感じなのが悔しくて仕方ないみたいよ。」

侍女たちの噂話を
フィロメナはただ黙って聞いていた。
マルヴァリスとユリアナがいなくなった。
それを聞いても何とも思わない自分がいる。
彼らがそうだったように、
私も彼らを兄弟だとは思っていなかった。
そんなことはもうどうでもいい。
今は自分の身の振り方を考えなければならない。

アルドレイン王国がドラゴニア帝国から
主権を回復しようという流れの中で
貴族たちの間から
ドラゴニア帝国の女を王妃にしたままでいいのか
という声があがり始めていた。
帝国から押しつけられた女ではなく、
自分たちが選んだ女性を王妃として冠するべきだと。

もう既に新しい王妃を探す者まで出てきたと聞く。
王太后は変わらずサレハ王女推しで、
サレハ王女派は
着々と社交界で派閥を拡大させているらしい。
あとはヴァリニア王国の有力貴族のご令嬢など。
当然、フィロメナを推す声は皆無だ。