宗主国の皇女は、属国で幸せを見つける

『最近、
国王夫妻の仲が良いらしい。』

マルヴァリスとの晩餐の後、
そんな噂が宮廷の貴族たちの間で広がり始めた。

実際のところ
そんなに何かが大きく変わったわけではないが、
オルランドのフィロメナへの態度が軟化したのは事実だ。
朝食の席でも必ずフィロメナに挨拶をするし、
今日の予定を確認したり、
労いの言葉をかけたり、
コミュニケーションが格段に増えた。

この変化を一番喜んでいるのがマーゴで、
彼女が積極的に噂を流している。

一方、
フィロメナへの秘めた恋心を抱えたレナートは
少し複雑な思いだったが
この2人が上手くいってくれるなら
自分は全力でお支えするのみと
自分の思いに区切りをつけた。

この時がフィロメナにとって
嫁いで来てから一番穏やかな時期だった。
けれどそれはほんの短い間のことで
嵐はすぐにやって来た。