宗主国の皇女は、属国で幸せを見つける

「でしたらその時は私と離縁してください。私は陛下より2つも年上ですし、私の不妊を理由にしたら陛下の名誉も守られるでしょう。王国のためにも、若くて健康な方を新しい王妃に迎えてくださいませ。」
フィロメナのは努めて明るく言ったつもりだが、
その口元は震えていた。

「離婚したらどうするんだ。まさか、ドラゴニア帝国に帰るわけではないだろう。」
「先ほど皇太子殿下の話にも出てきましたが、私の母はエスメリア王国の出です。以前、エスメリア王国の使者の方と知り合いになりましたから、その方の伝手でエスメリア王国まで行ってみようかと思います。」

フィロメナの返答に、
オルランドが何か言葉を返すことはなかった。
ただ窓の外をじっと見つめ、
絶対に離さないとでも言うように
フィロメナの手を握り続けていた。

ただ手を握られているだけ。
たったそれだけのことなのに、
他人の温もりに触れることが
久しぶり過ぎたからだろうか、
ホッと気が抜けて
あとからあとから涙がこぼれ落ちてきた。

「あ、ごめんなさい。どうしましょう、涙が止まらなくて。」
フィロメナが泣いていることに気づいたオルランドが
胸元に閉まっていたハンカチを取り出し、
サッとフィロメナに差し出す。