宗主国の皇女は、属国で幸せを見つける

その夜、
フィロメナはオルランドとともに
マルヴァリスの招待で
軍艦で催される晩餐に出席した。
招待という体をなしているが実質強制だ。
フィロメナはオリーブ色のケープドレスを着て出席した。

オリーブの花言葉には「勝利」があり、
表向きはマルヴァリスへの激励の意味のつもりだが
本当の意味は別にあった。
オリーブの花言葉には「平和」もある。
フィオルガルデ連邦の平和を願うフィロメナからの
戦争反対という無言のメッセージだ。

そんなフィロメナのささやかな抵抗など、
悲願であったフィオルガルデ連邦征服を前に
上機嫌なマルヴァリスは気付かない。
どんどん酒を飲み進め、
オルランドとフィロメナを前に
延々と自分の武勇伝を語り続けた。
自分の失敗は部下のせい、
部下の手柄は自分の功績、
が基本のマルヴァリスだ。
どこからどこまでが本当なのか分からない。
あくびをかみ殺しながら、
2人はひたすら聞き流す。

「おい、フィロメナ。お前は一体いつ孕むんだ?」
自分語りについに飽きたのか、
今度は大声でフィロメナに絡み始める。
フィロメナの顔が曇ったのと同じく、
これにはオルランドも顔を顰めた。
「だってそうだろう。もう輿入れして1年は経つのに、お前の腹はぺったんこだ。ちゃんとやることやってんのか?」
とんでもないセクハラ発言である。