宗主国の皇女は、属国で幸せを見つける

【マーゴの一人語り】

新年が明けたら始まるレセプションの最終日、
予定より早く帰ってきた王妃様の顔は
涙でぐちゃぐちゃになっていた。

「またドラゴニアの人間に酷いことを言われたのですか?」
私は王妃様に駆け寄り、
その細い肩を抱きしめた。
王妃様が泣いて帰ってくるとき、
その理由は決まっている。
ドラゴニア帝国の人間に女として侮辱されたのだ。

「言われることはいつも同じなのに、どうしていつも泣いてしまうのかしら。悲しくて悔しくて、どうしようもなくなるの。」
侍女の1人が急いで持ってきた温かいおしぼりを
真っ赤に腫らした目に当てて
王妃様は呟いた。

ドラゴニア帝国は
アルドレインを実質的に支配できるよう、
傀儡の王を欲している。
だから王妃様に早く国王陛下との間に王子を作れと
しつこく迫っているのだ。
ちょっと力のある帝国だからと
我々の国に干渉してくるなど
貴族の端くれにすぎない自分でも腹が立つ。
そして皇女であった王妃様に対しての
侮辱とも言うべき言葉の数々。
『娼婦の末裔』『石女』『役立たず』
私がその場にいたなら、
そいつの頬を思いっきり張り倒してやりたい。
私は怒りのあまり、
王妃様の前で泣いてしまったぐらいだ。