宗主国の皇女は、属国で幸せを見つける

その翌朝の朝食の席に
フィロメナはいつも通り、
何事もなかったかのようにやって来た。
目は泣き腫らして
真っ赤になっていてもおかしくないのに、
濃い化粧で完璧に整えられていた。

(たぶん昨日が初めてというわけじゃないんだ。)
静かに朝食をとるフィロメナを切なげに見つめながら
レナートは考える。
ドラゴニアの大使がわが国のパーティーに来たのは
昨日が初めてではない。
きっと顔を合わせるたびに
『早く妊娠しろ』とフィロメナに迫っていたはずだ。
そのたびに
あの貴女はきっと一人で泣いて耐えてきたんだろう。
可哀想に。

「王妃、体調は大事ないのか?」
突然、オルランドがフィロメナに声をかける。
オルランドから声をかけるなんて
非常に珍しいことで
フィロメナも一瞬答えに詰まってしまったようだ。
「はい、問題ございません。連日のパーティーで少し疲れが出てしまったようで、昨日は早めに下がらせていただきました。これからは体調管理により一層気をつけたいと思います。」
「体調に問題ないのなら、それで良い。」

それ以降はまた静かな時間に戻る。
それでもオルランドがフィロメナの体調を気遣うなんて
初めてのことだったので、
その一部始終を見ていたマーゴは
嬉しい気持ちでいっぱいになるのだった。