宗主国の皇女は、属国で幸せを見つける

冬至のお祭りが終わればあっという間に1年が終わり、
新しい年がやって来る。
新年が王家で最も忙しい時期だ。
それは、
各国の大使を招いた
国王夫妻主催のレセプションが開催されるからである。

王族達はもちろん、
彼らに仕える者たちも目がまわるほどの忙しさで
ゆっくり新年を祝う時間はない。
(ふーっ。今夜が終われば少し休めるぞ。)
レナートはワイングラスを片手にひと息ついた。
合間合間の休憩タイムになると
ついついフィロメナの姿を探す。

「ん?誰だ、あの男は。」
フィロメナは背の高い男と喋っており、
男の指図でバルコニーに移動するようだ。
ついつい気になったレナートは
盗み聞きは趣味が悪いと思いつつ、
バルコニーへと続く扉のそばで
さり気なく聞き耳を立てることにする。

「なぜあなたがこの国に送られたのか、忘れたわけではありませんね?」
「・・・」
何やら物騒な話しだ。
フィロメナの反応はここからでは分からない。

「結婚して1年以上が経つというのに。いまだ懐妊の兆しがないとはね。まぁ国王からは全く相手にされてないのは、よくよく分かりましたが。その全く似合っていない化粧もどうにかした方が良い。」
「私は気に入っておりますので。」
「そんな外見を作り込む余裕があったら、夜の方の研究をされてはいかがかと。以下、マルヴァリス皇太子からの伝言です。『どんな手を使っても構わない。その顔と身体で国王を籠絡し、一刻も早く王子を産め。』こういうことは、エスメリアの女の得意技でしょう。良い報告を期待してますよ。」