宗主国の皇女は、属国で幸せを見つける

「ここはぜひ、夫婦で楽しんでいただきたく、、、」
「いいのですよ、レナート。」
なおも説得を試みるレナートをフィロメナが遮る。
「陛下はただでさえ忙しいのですから、お手を煩わせるのは忍びないわ。祭りは来年以降もあるのですから、いつかどこかで行ける機会もあるでしょう。」
フィロメナはそう言うと、
すっと立ち上がって朝食の席を辞した。
あとに残ったオルランドとレナートの間には
重苦しい沈黙が流れた。

「お役に立てず、申し訳ございませんでした。出過ぎたことをしたと反省してます。」
後日、レナートはフィロメナに謝罪した。
「いいのよ、気にしないで。」
フィロメナが笑って許してくれるものだから、
レナートはますます罪悪感でいっぱいになる。
「それより見て。もう8割方、マフラーが完成したのよ。子どもたちがお祭りを楽しんでくれる方が私は嬉しいわ。」

その後予定通りマフラーは完成し、
孤児院の子どもたちのもとに届けられた。
フィロメナの元には子どもたちからの御礼の手紙と 
子どもたちが露店で買ったというクッキーが
送られてきた。
フィロメナはそれを美味しそうに頬張っていた。