宗主国の皇女は、属国で幸せを見つける

「陛下を誘ってみては？」
「国王陛下を？あなたは面白いことを言うのね。私と陛下がそんなことをする間柄じゃないのはあなたが一番良く知っているでしょう。」
「今はそうですが。私も1人の臣民として、国王夫妻が仲睦まじい夫婦であることを願っています。仲良くなるにはきっかけが必要ですから。」
「レナートがそう言うなら。あなたがお膳立てしてくれる？そうしたら私も頑張ってみるわ。」

無理だと言いながら
どこか期待するような照れたフィロメナの顔を見て、
レナートは必ずオルランドに
うんと言わせてみせようと思った。
早速、翌朝の朝食の席でオルランドに提案する。
「今年も冬至の祭りが着々と進んでいるようです。王妃様はまだお祭りを体験したことがございませんし、どうでしょう？視察も兼ねてお二人でお祭りに行かれては？」
レナートの提案にオルランドはしばらく手を止め、
静かに返答する。
「私が行けば、市民たちも気を遣って祭りどころじゃないだろう。王妃が興味があるなら、お前が連れて行け。」
レナートは即座にフィロメナを見る。
フィロメナは無表情を崩さないが、
目には落胆の色が浮かんでいるのを
レナートは見逃さなかった。