宗主国の皇女は、属国で幸せを見つける

「王妃様が本当の自分を受け入れるようになるのは、王妃様の全てを心から愛して包んでくれる男性が現れた時でしょうね。私は、その男性が国王陛下であればと願っているのですが。」
マーゴは寂しそうに笑った。
叶うことはないのかもしれないと、
彼女自身も諦めているのだろう。

「なるほど。」
レナートはその後、何も返せなかった。
オルランドとフィロメナの夫婦のことは
自分が口を出すことはできない。
その代わりと言ってはなんだが、
自分だけはフィロメナの味方でいようと決意する。
社交の場で一人ぼっちになっているフィロメナに
さり気なく声をかけてフォローしたり、
理由をつけてフィロメナの公務に同行したり。
意識的にフィロメナと関わりを持つようになって、
フィロメナの知らなかった一面を知るようになる。

まずフィロメナの性格。
無口であまり笑わず、
ツンとすました無愛想な女性だと思っていた。
しかしそれは宮廷だけの話で、
一歩外に出るとまるで別人かというフィロメナがいた。
孤児院や福祉施設の慰問では、
子どもたちと同じ目線でお話し、
病に苦しむ老人の手を握って腰をさすってあげる。
にこやかな微笑みを絶やさず、
人々との交流を楽しんでいる。
宮廷よりも何倍も生き生きしているのだ。