宗主国の皇女は、属国で幸せを見つける

自分の仮説が正しいとすると、
おそらくこの秘密はオルランドも知らないはずだ。
国王夫妻は夜をともにしたことがないので、
オルランドはフィロメナの素顔見たことがない。
あの厚化粧の下にどんな素顔が隠されているのだろう。
夫でさえ知らない秘密を自分が知ることができたら、
と内心ワクワクした。

けれどそんな好奇心があっても
それを確かめる術などない。
何かよいきっかけがあればなぁと思っていた矢先、
好機が訪れる。
オルランド宛に振り分けられた書簡の中に
フィロメナ宛のものが混ざっていた。
いつもなら部下に届けさせるところだが、
今回はちょうど手が空いたからと自分が引き受ける。
自室にいる時はさすがにあの厚化粧はしていないだろう。
あわよくばを期待して、
レナートは急いでフィロメナの執務室へ向かった。

執務室には誰もおらず、
来客を告げるベルを鳴らすと、
案の定、侍女が出てきた。
レナートは手紙をその侍女に渡すと
世間話の体でフィロメナが何をしているのか尋ねる。
その侍女は当たり障りなく、
「お部屋で寛いでおられます。」と返答するのみ。
侍女の返答は間違っていない。
せっかくのチャンスだったのになと
内心落胆してしまった。