宗主国の皇女は、属国で幸せを見つける

それゆえ、
フィロメナの元には毎日たくさんの手紙が届く。
それを読んで内容を確認し、
オルランドの許可を得たうえで訪問する場所を決定する。
それが毎週月曜日の午前中のフィロメナの楽しみだった。

パーティーから2週間後の月曜日は
いつも届く招待状に混じって
一通の御礼状が届いた。
エスメリア王国の紋章が封蝋に使われており、
送り主はヴィットリオからだ。
御礼状にはこの前のパーティーに関するお礼が記された
当たり障りのないものだ。
それでもふっと心が緩む。
いつか自分が母の祖国の地を踏むことがあるだろうか。
「ねぇ、マーゴ。エスメリア王国ってどんなところかしら?」
「さぁ、私も行ったことがありませんから。ここよりずっと西の美しい海の国だとしか。」

そんな感じでフィロメナとマーゴが
いつも通りに過ごしていた昼下がり、
そんな2人の様子を
あちら側の窓からじっと見つめる人影があった。