宗主国の皇女は、属国で幸せを見つける

その日以来、
フィロメナはより一層公務に邁進するようになった。
公務に出ていれば、
王太后たちと顔を合わせずに済むからだ。
それに貴族たちと比べて、
一般市民たちはずっとフィロメナに好意的だった。

それはフィロメナが分け隔てなく
誰とも温かく交流するからだ。
同じ目線の高さで話を聞き、
同じテーブルについて飲食を共にする。
時には畑仕事を手伝ったり、
伝統工芸に挑戦したり。
今までの王族では考えられなかったことだ。
彼らは数年に一度あるかないか、
思い出したように現れて高みの見物をしていくだけ。
だから地方の民たちは王族に関心が薄く、
王国への忠誠心も低かった。
ところが新しく王妃になったこの女性は、
数カ月に一度顔を見せてくれる。
顔と名前も覚えていてくれて、
以前話した内容まで記憶してくれている。
市民たちは「俺達の女王」として
フィロメナを熱狂的に歓迎した。

そんな温かい歓迎を受けられるとあっては
フィロメナも地方へ赴くのが全く苦にならない。
フィロメナの元には、
地方から招待の手紙が大量に届くようになっていた。