宗主国の皇女は、属国で幸せを見つける

フィロメナにとって
ダンスとは必要があれば義務として応じるだけで、
楽しいとかそういう類のものではなかった。
それがどうだろう。
ヴィットリオとのダンスは
自然と楽しいと思えた。
きっとヴィットリオのリードが上手いからだ。
それを伝えると、ヴィットリオは否定する。
「王妃さまがお上手だからです。」と。

話し続けるとあっという間でもっとと思ったが、
何曲も踊り続けるわけにもいかず、
一曲だけに留める。
それでもフィロメナには充実した時間だった。

フィロメナとヴィットリオのダンスは
時間にしてたった数分間だけのものだったが
十二分に周囲の注目を集めていた。
息がぴったりと合った2人のダンスは
実に優雅で美しかったのだ。
彼らを見つめている者の中には 
王太后やサレハ王女、
そしてオルランドがいた。