宗主国の皇女は、属国で幸せを見つける

フィロメナの目から涙があふれ出た。
こんなに嬉しい贈り物が他にあるだろうか。
まだ会ったこともないお祖父様。
遠い西の果ての国にいるお祖父様が
自分をこんなにも思ってくれているなんて。
「なんと御礼を申し上げたら良いのでしょう。こんなことまでしていただいたからには、直接会って御礼を伝えなければ。」
「そうだね。貴女が会いに行けば非常に喜ばれるだろう。」

"王妃として残ってほしい"
フィロメナが絶対に言われると思っていた
この話題は全く切り出されないまま
晩餐会はついに最後のデザートまで来てしまった。
フィロメナはなんだか少し肩透かしを喰らった気分だ。
ちょっとモヤモヤしつつ
ジェラートを口に運んでいると
ワルツ調のゆったりした曲が流れてきた。
「あ、この曲。」 
フィロメナはつい言葉を漏らす。
「この曲、知ってるの?」
「知ってるというか、舞踏会で最後に流れる曲でしょう?私はその場にいたことはありませんけれど、自室で窓を開けているとこの調べが聞こえてくるんです。曲調が好きで、いつもこれを聞きながらミルクティーを飲んでいましたの。」

(あ、そんなつもりなかったけど、ちょっと気まずい思いをさせてしまったかしら。)
沈黙が続いてしまったので、
内心フィロメナは焦ってしまった。
オルランドには皮肉に聞こえてしまっただろうか。