宗主国の皇女は、属国で幸せを見つける

「私ももともと志があって地方に出向いていたわけではなく、それしかやることがなかったからやっていただけです。でも思いのほか楽しくて、こちらの方が性に合っているなと思いました。私は王太后陛下やサレハ様のように社交界では上手くやれませんでしたから。あ、サレハ様といえばご婚約が決まったそうですね。彼女から初めてお手紙をいただきまして、嬉しく拝見しました。」

そう、フィロメナは先日
サレハから手紙を受け取っていた。
そこには今までの無礼な態度についての
真摯な謝罪と弁明が綴られていた。

自分の両親の離婚の影響で
顔も知らない相手と結婚することに嫌悪があり、
それなら王太后の推薦通りに
国王陛下と結婚するほうが良い
と思っていたのは事実だが、
国王陛下を恋い慕っていたわけではない。
故に、
王妃様から国王陛下を奪おうなんて
これっぽっちも考えていなかった。
躍起になっていたのは王太后だけで、
自分は王太后の怒りに触れることが怖くて
強く否定もできず、
彼女の意見に従うふりをするしかなかった。
そのせいで
王妃様に苦しい思いをさせてしまったことを
申し訳なく思う。

サレハからの手紙を読み終え、
彼女からの謝罪を自然と受け入れることができた。