宗主国の皇女は、属国で幸せを見つける

王太后は
オルランドが最も苦手とする人間だったが
フィロメナのためにそんなことは言ってられない。

意を決して、王太后の元へと乗り込む。

「珍しいわね。あなたが訪ねてくるなんて。」
王太后は優雅にお茶を飲みながら
オルランドを迎え入れた。
いついかなる時でも完璧に着飾り、
自信たっぷりのその姿は
社交界のトップたる貫禄を醸している。
「あぁ、あの娘は元気なの?」
王太后があの娘と呼ぶのはフィロメナのことだ。
決して王妃とは呼ばない。
「えぇ、まぁ。」
「あの娘も身のほどを知る良い機会だったんじゃない?まぁ、私の名前が利用されたのは癪に障るけど。臣下たちから支持を得られない女は王妃にふさわしくないわ。」
「フィロメナはよくやってくれています。私からすれば、いつまでも頑なに認めようとしない母上こそ王太后の品位に欠けると思いますが。」
オルランドの言葉を聞いて、
王太后の額に青筋が浮かぶ。

「何ですって?あなたこそ、母に向かって何という口をきいているのかしら。あの娘が王妃にふさわしい?冗談言わないで。あの卑しいドラゴニアの血を引く女が、この国の王妃だなんて。恥ずかしいわ。」