ジメジメとした嫌な空気が肌に纏わりついてくる。風間計(かざまけい)はため息を吐いた。六月に入ってから空は毎日曇り空。気分もどこか晴れない。

中学校指定のバッグを片手に計は歩く。その隣には、幼なじみで同じクラスの海野華(うみのはな)が鼻歌を歌いながら歩いていた。

「華、よく能天気に鼻歌歌ってられるな。再来週には期末テストがあるんだぞ。忘れてんのか?」

「失礼な!テストのことくらい覚えるよ!」

華はプクリと頰を膨らませて「怒ってます」アピールをする。しかし、去年も同じような台詞を言ってテスト前日に「勉強してなかった〜!教えて〜!」と泣きついてきたことを計は忘れていない。

「……二年生になって勉強さらに難しくなっただろ。大丈夫なのか?べ、勉強よかったら教えてやってもいいぞ?」

緊張を覚えながら計は提案する。ここ数日、華の姿を見るだけでどこか落ち着かないのだ。華は少し考えた後、「歴史は大丈夫かも〜」と言いながらバッグの中に手を突っ込んだ。