結局、この世界が夢なのか現実なのか、今のこの朦朧とした意識の中では判断することができなかった。
けれど、仮にこれが夢だったとしても、今この瞬間の幸福を抱いてその中に身を投げようと思った。
ずっと待ち望んでいたことだった。悲しくもないし、寂しくもない。やっと、全てが終わる。しかも、こんなにも理想的な形で。
ずっと、ひっそりとどこかで、抱え込んでいた自己に対する破壊衝動。それをいつか、最も幸せな瞬間に稼働させて、元々あってなかったはずの意味を、本当の意味で無に帰したいという、奇特で不適応的な、生物らしからぬ夢。
そして、そんな夢が、私の生をばくりと喰らった。
後悔はなかった。醜い私に与えられた、唯一の美しさだったように思う。
多幸感を抱きながら、私はそっと意識を手放した。深い暗闇に、身を投じる気分だった。夢はもう見なかった。
けれど、私はずっと、彼と一緒になれる気がしていた。
長く、醒めることのない愛の中に、私たちは永遠に沈むことになる。
そのとき、私は依央の胸の中にいた。
彼が、私の名前を呼んでいるのがうっすらと聞こえた。そこで私ははじめて、人間らしさというものを得た。
そんな、そんな夢。


