だんだんと、瞼が落ちてくる。
眠ったら、次は何が起こるのだろうか。また、夏目先輩が出てくるのだろうか。それとも、目が覚めたら本当に依央がいなくなっていて、そっちの世界がやっぱり、本当の世界だった、ということもありうるのだろうか。
「依央……」
「どうした」
「依央、何度も夢を見ているの。これが、夢か現実かわからないの」
彼の腕にしがみつきながら、そんなふうに言った。
依央はそんな私を笑うことをせず、ただ微笑みを浮かべて、その腕で私を抱いた。
「どっちだっていいよ」
「そうなのかな……」
「俺のいる世界が夢でも現実でも、お前がそこにいてくれるなら、何だっていいよ」
気分がふわふわとしてきた。どうしてだろう。さっき、あんなに眠ったばかりなのに。
依央の身体も暖かかった。心地よい温度に包まれていると、なんだか全てがどうでもよくなってしまう。
「俺、本当は料理、苦手じゃなかったはずなんだけどな」
「……」
意識がだんだんと朦朧としてきて、私は言葉を発する気にならなかった。けれど、ひとりでそっと、彼の言葉を頭の中で反芻していた。
空になったマグカップ、
よく眠ったはずなのに朦朧としている意識、
私の頭を撫でた依央の満足そうな顔、
そして、彼の言葉。
ひとつ、頭の中にある仮説が浮かんできたけれど、それを彼に確かめるよりも早く、私はあまりにも過大な満足感を抱き抱えることなる。依央の身体に手を回すと、彼は手にかける力を強くした。


