何だか訳がわからなくなってきて、私はソファーの上でひとり、膝を抱えた。涙がぼろぼろと溢れてきて、制服の袖が濡れた。
「泣かないで。大丈夫だよ、」
夏目先輩が優しく私の頭に触れる。けれど私の心はここにはない。もっと遠くに、あるべきところがあって、だからこそこの世界の真贋がわからなくて、夏目先輩の手が冷たくて、苦しい。
嗚咽を繰り返しながら、頬に流れる涙を拭く。そんな私の様子を見かねた夏目先輩が、ティッシュをそばに置いてくれる。
「もう少し休んでいても良いよ。また後で、起こしてあげるから」
「……」
「すこし調子が悪いんだね」
「ちが、」
「良いんだよ。嫌な夢は忘れて、何も考えずにそこで休んでいてくれれば。僕にとっても、その方が都合良くてね」
夏目先輩が私をそっとソファーに寝かせた。泣いたせいで疲弊していた私は、先輩の促すままに、ソファーに身体を沈めるほかなかった。
「おやすみ。また会おうね」
夏目先輩の声が遠くなっていく。
意識が遠くなる。
身体がうまく動かせない。
夏目先輩、あなたはどうしてここにいるのですか。
私はどうして、ここにいたのですか。
全部、全部夢だったのですか。
そんな疑問が浮かんでは消える。けれど、大好きな彼の姿だけははっきりと覚えている。
一抹の苦しさを感じながら、私は眠りについた。
こんな状況でも、夏目先輩が放つ独特の雰囲気は、私を深い睡眠へと誘うらしい。
そっと、目を瞑った。


