性、喰らう夢




 私に与えた新しい噛み跡にそっと触れながら、依央は痛みに歪んだ私の顔を見た。

 いたい、と彼の腕を握りしめながら訴えると、彼はその顔に微笑を浮かべながら、そうだな、と唇を動かした。

 その仕草が妙に妖艶で、胸が締め付けられるような気分になる。


 それから彼は、私を恍惚へと突き動かしたり、あるいは地の底に引きずり落としたりしながら、私をその波の中に溺れさせていった。

 綾人くんの跡を見つけては、その度に自分の跡を重ねる。そんな彼の姿がやけに野生的だった。

 妬いてないけど、と彼は言っていたが、その言葉が彼なりの見栄であるような気がしてならなかったし、正直なところ、彼に新しい跡をつけられるたびに腹部の奥底から湧き上がってくる醜い欲望が渦巻いていた。


 彼と繋がったとき、私は自分の最期を自覚した。

 ありえないほどに莫大な多幸感に包まれる。そして、彼のことが好きだと思った。だからこその自覚、これ以上はないという自覚だ。


 彼は何度も私に口づけを落とした。彼も、私のことを愛してくれていれば良いのに、と思ったが、それは敢えて口には出さなかった。

 人を愛し、人に愛されるということは、それ自体が奇跡的だ。そんな幸福を一身に受けられるという事実が、私にとっては出来の悪いおとぎ話に身を投じられた気分で、そんなもの私なんかには似つかわしくない。

 けれどそのとき、私はあまりにも、身の丈に合わない過大な幸福というものを垣間見た。

 彼の体温の熱さを感じる。