性、喰らう夢




 須藤さんはそのうち、落ち着いてきたみたいだった。けれど、私に対して負の感情を抱いている、ということだけは変わらずのようだ。

 それは、先程彼女が自分で言っていた歪んだ羨望かもしれないし、嫉妬、憎悪、もしくは悪意かもしれなかった。

 少し前の私なら、そんな感情なんてどうでも良いとこき下ろしていたに違いない。けれど、今なら彼女の気持ちがすこしだけわかる。

 信頼を置いて長く付き合っていた恋人から別れを告げられ、助けてくれた先輩から利用された彼女。彼女は今、誰を頼って生きているのだろうか。



「祥平ってね、可哀想な子が好きなのよ」



 須藤さんが急にそんなことを言う。彼女の声が震えているのがわかった。わたしはただ、相槌を打つことしかできなかった。

 須藤さんはそのまま、独り言みたいにぽつりぽつりと言葉を溢した。



「なのに、こんなに惨めなあたしのところには戻ってきてくれないのよ。馬鹿みたいよね」



 自分の犯した罪が、意識せぬ間に、彼女を深く傷付けていたに違いない。祥平と夏目先輩が、彼女をどう扱っていたのかはもう知ることはできないけれど、彼らをそうさせて、彼女を傷付けたのは間違いなく私だったのだ。

 少し悩んでから、ごめん、と言いかけた言葉を喉奥に押し込んだ。何かにつけてすぐに謝ってしまう癖を、そろそろ直そうと思ったからだった。

 少し前に依央に言ったのと同じだ。お互いに加害者で、お互いに被害者だった、で良いじゃないか。