性、喰らう夢







 学校に着いた。昨日と同じで、下駄箱を開いても私物化している来客者用のスリッパがなくなっていることはなかったし、机の中にも、ロッカーの中にも、気持ち悪いものは何も入っていなかった。

 私に対する嫌がらせは、もう起こらなそうだな、と思った。いやに平和な一日のはじまりを予感した。



 午前中の3限目に、体育があった。

 ロッカーの中に虫の死骸を入れられていたあの日、依央が使い物にならなくなった私のジャージを処分してくれたままだったので、私は着替えることができなかった。

 ジャージと学校のスリッパは、夏目先輩が弁償してくれることになっている。依央が知らない間に、夏目先輩と話をつけてくれたみたいだった。

 今日のところはとりあえず、授業は見学しておくことにした。


 制服のまま、私は皆がグラウンドで走っている様子を横目に、先生に案内されるがままに日陰の方に向かった。授業を見学する人は、そこで授業内容に関するレポートを書かなければいけないらしい。

 ペン一本と、先生から手渡されたレポート記入用のボードを持って、その場所に座ろうとした、のだが、そこにはすでに先客がいた。



「あ、」

「……」



 色々なことがあった手前、彼女と顔を合わせるのは少々気まずい、のだが、ばっちり目が合ってしまった手前、無視する訳にもいかず、軽く会釈をしてみる。

 彼女は目を丸くしてこちらをじっと見つめている。アーモンド型の可愛らしい瞳で、どこか幼さと愛らしさを兼ね備えているような性質を持ち合わせているのに、その奥は笑っていないようだった。



「ジャージ、ないからってこと?」



 先に口を開いたのは、彼女、須藤さんの方だった。